アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 


 は〜。
 気持ちよかった、源泉かけ流しの湯。

 ほくほく顔で那智が戻ってくると、ラウンジから浴衣姿の遥人が現れた。

 どうやら機嫌が悪いようだ。

 まだ怒ってるのかな、あんなことで、と思い、開口一番、
「心が狭いですよ」
と言ってやると、

「なんの話だ」
と言われる。

「あれっ? まださっきのことで怒ってるんじゃないんですか?」

 違う、と遥人は言った。

「風呂が長いと言ってるんだ」

 いや、余計、心が狭い気が……と思っていると、
「もう、一杯呑んでしまった」
と言いながら、今まで呑んでいたらしいテーブルに戻っていく。

 その席からは、あのライトアップされた滝がよく見えた。

 緑の光に照らされて輝きながら水が落ちてくる。

 座りながら、
「わあ、綺麗ですね〜」
と言うと、

「お前に見せたかったんだ」
とまだ機嫌の良くないまま言ってくる。

「……そうでしたか。
 すみません」

 それなのに、なかなか風呂から出てこなくて、自分ひとりで一杯呑んでしまったから機嫌が悪かったのだろう。

「まあまあ、専務。

 もう一杯呑めばいいじゃないですか。
 今日は帰らなくていいんだし。

 私も呑みますよ〜」

「宣言しなくとも呑むだろうが」