アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「え?
 夜は寝た方がいいですよ」

「不眠症気味でな。
 よく眠れないんだ。

 目を閉じると、いろいろと懸案事項が浮かんできて」

「お笑いの番組でも見て寝たらどうですか?」
と提案してみたが、そんなものは見ない、とすぐに却下されてしまう。

「そうだ。
 浮気の相手はしなくていいから、お前、俺を寝かしつけろ」

「は?」

「お前のつまらない話を聞いていたら、脱力して寝られそうだ」

 俺が寝たら帰ってもいいし、そのまま居てもいい、と言った遥人は立ち上がり、奥の部屋からなにか取ってきて投げた。

 うわっ、と受け止めきれずに落下する。

 毛足の長いカーペットに埋もれたそれを見ると、鍵だった。

「お約束に鈍い奴だな。
 此処の鍵だ。

 かけて出て行け」

「え、いいんですか?
 鍵とか借りちゃって」

「やる。
 なくすなよ」
と半眼の目で睨まれる。

 はっ、はいっ、と縮み上がった那智は、なくさないよう、急いでキーホルダーにつけた。

 その様子を遥人は観察するように眺めている。