アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「なんですか」
とその顔つきの優しさに、ちょっと緊張しながら訊くと、

「いや、お前にとって、あの人は本当に家族なんだなと思って」
と言ってくる。

 那智はまだ、膝を抱えている猿を見ながら言った。

「家族ですよー。
 あの人が何者でも。

 お母さんと喧嘩して、長い間、私を放ったらかしにしていた人でも」

 遥人はなにか考えているようだった。

「……そうだな。
 家族ってのは、血のつながりじゃないよな」

「あの、専務」
と那智は遥人を見上げたが、今はなにも言わない方がいい気がして、

「次はあっち見たいです」
と指差した。

「そうか。
 俺はこの首に巻ける蛇とやらが気になるが」

「……冬眠してますよ、きっと」
「動物園だぞ、此処」

「冬眠してますよ」
と繰り返しながら、道端の看板を眺める遥人の腕をつかみ、引きずって逃げた。