アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「なにがいい?」
と訊かれ、結構たくさんあるレストランをパンフレットを眺めたあとで、那智は目の前を指差し、

「あそこで」
と言った。

「近いからか」

 ともかく中に入りたいんだろう、と遥人は笑う。

「それもありますけど。
 この強烈な匂いに惹かれない人は居ませんよっ」
と那智は力説した。

 那智が指差したそこは焼き肉屋だった。

 わかったわかった、と那智の勢いに押され気味な遥人がなだめるように言う。

 焼き肉を堪能したあと、他の動物も見に行った。

 膝を抱え、イジけているような手の長い猿が、厭世的になっているときの桜田に似ていると言って笑うと、遥人は、
「あの人でも、落ち込むときがあるのか」
と意外そうに言ってくる。

「結構ありますよ~。
 普段、自信満々なだけに、落ち込むと鬱陶しいこと、この上ないです。

 専務が尊敬するような人ではないですよ」
と言ってやると、遥人はこちらを見て笑う。