カピバラだ……。
那智は子供たちに混ざって、しゃがみ、カピバラを眺めていた。
カピバラの浴槽にかぶりつきの位置に居るので他の人の邪魔にならないようにだ。
結婚式までにあった唯一の自由な休日。
遥人は約束通り、那智をカピバラの湯浴みを見に連れてきてくれていた。
昨夜は遅くまで仕事だったので、遥人は少し眠そうだった。
だから、気を利かせて、運転を代わると言ってみたのだが、激しく拒絶された。
まあ、結婚前に別の女と居るときに事故を起こしてもな。
復讐前の大事な身体だし、と多少やさぐれて思う。
カピバラの居る浴槽からは湯気が立ち上っていた。
だが、当たり前だが、見ている方は寒い。
このなんとかランドが、山の中腹で吹きっさらしの場所にあるからだ。
遥人に言ったら、
『なにが、なんとかランドだ。
名前くらい覚えろ。
カピバラ以下の知能か、お前は』
といつものように罵られたのだが。
このカピバラ以下ってどうなんだろうな。
カピバラは相変わらず、思索に耽っているのか、ただまったりしているのかよくわからない顔で湯に浸かっている。



