アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「お母さん?」

 その言葉を聞き咎めて、梨花が言った。

「貴女、桜田さんの前の奥さんの子供?」

 そう、それで家族なの、と梨花はなんとも言えない顔で言う。

「私も子供とか欲しかったかな。
 遥人さんはいらないって言うの。

 しばらく作らなくていいって。

 ずっと私にも触れて来ないし」

 ……なんでだろうね。
 ぽつりとそう言い、梨花はゆっくりと階段を上っていった。

 子供はいらない、か。
 何故、遥人がそう言ったのか、わかる気がする。

 そう思いながら、見送ったあとで、桜田を見た。

「なんで此処に居るんですか。
 追わなくていいんですか」

「いいんだよ。
 所詮、違う世界の人間だ」

「なんですか、格好つけちゃって。
 いてててっ」

 頰を引っ張られていると、今度こそ、公子が現れた。

 今度はなにっ? という目で下から上ってくる。

「あ……えーと」

 もう誤魔化すのがめんどくさくなった那智は、手のひらで桜田を示し、
「父です」
と言ってみた。

 公子が、は? という顔をする。

 ……無理がある。
 年齢的に。