アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 梨花に叩かれるのは仕方ないとしても、これに関しては誤解だ、と思っていた。

「梨花、ちょっと来い」
と桜田が本気で怒って、梨花の腕をつかむ。

 さすが本気を出すと恐ろしいので、梨花も引き気味になるが、桜田は許さない。

「お前にはちゃんと言ってなかったが。

 こいつは妹じゃないが、本当に俺の大事な家族なんだ。
 誰だろうと、那智を傷つける奴は許さない」

 なんだか涙が出そうになった。

 そして、遥人が失ったものの大きさを知った。

 私はやっぱり、あの人を止められないかもしれない。

 いっそ、梨花にすべて話して、協力してもらおうかとも思った。

 梨花は遥人を愛している。

 だからこそ、桜田にすがろうとするのだ。

 彼女も遥人が殺人を犯すことなど、望まないだろう。

 だが、自分は遥人を裏切れない。

 彼の野望を勝手に潰すような真似はできない。

 自分はこのために生きてきたと遥人は言っていた。

 彼の人生すべてをかけてきたものを私如きが止めることはできないのだ。

 このしょうもない話しか出来ない、出来そこないのシェヘラザードには。