アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「洋人、お母さんの癖が移ってきてるわ」

 性格も似てきてる、と母の愛人である洋人に言うと、
「それがあの人の精一杯なんだよ」
と肩をすくめて見せる。

「自分が愛情をかけられて育ってないから、娘にもどうしていいのかわからないだけ。
 なんだかんだで、桜田や僕に君の様子を見させてるじゃない」

 那智はさ、と少し言いにくそうに言う。

「那智はあの人の恋人に襲われかけたことがあるよね」

「なんで……」

 それは誰にも言ったことのない心の傷だ。

 すぐに逃げたから大丈夫だったが、あれからちょっと男の人が怖くて、それで恋ができなかったというのもある。

「知ってるんだよ、あの人。
 だから、君と別れて、暮らし始めた。

 二度と自分のせいで、君に危害が加えられたりしないように。

 ま、那智を襲いかけたそいつは、桜田が半殺しにしたらしいけど。

 あの人の場合、シャレにならないからねえ」

 本当に、半殺しで済んだのだろうかな……。

 はは、と那智は笑った。

「じゃあね。
 あんまり期待しないで待ってて」
と言って洋人は行ってしまう。

 溜息をついて、ドアを開けると、桜田が立っていた。

 うわっ、と声を出して逃げかけるが、洋人に気づかれてはまずい、と思い、そのまま、桜田を押しのけるようにして中に入り、ドアを閉めた。