アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




 翌朝、那智は早めに遥人の元を出て、一度、自宅に帰った。

 鍵を開けるふりをしたあとで、扉の前で呼びかける。

「洋人、居るんでしょう?」

 すると、ちょっと間があって、階段の方から、洋人が現れた。

 今日も曲の流れていないヘッドフォンを首からかけている。

「洋人。
 調べて欲しいことがあるの」

「高くつくよ」

 笑いもせず、洋人は言った。

「う……幾ら?」
と言うと、洋人は笑い、

「君から金は取れないよ。
 僕は君のパパだからね」

 そう言う意味じゃないよ、と彼は言った。

「なにも知らない方がいい。
 君の気持ち的に後から高くつくって言ってるんだ」

 那智は洋人の手を握り、
「お願いよ、洋人。
 お母さんに、やっぱり、洋人は頼りになるって言っておくから」
と言うと、

「わかったよ、那智。
 でも、後で泣いても知らないからね」

 そう言い、
「じゃあ、報酬はこれでいいや」
と那智の頬に軽くキスしてくる。