アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 


 遥人の車で出かけ、山の上にある公園に行った。

 端の方まで行くと、夜景がよく見える。

「わあ。
 すごいですね。

 此処、子供の頃、花火を見に来たことがありますけど。

 あれ以来、初めてです」

 そう喜ぶと、遥人も少し嬉しそうな顔をした。

「……俺も子供の頃、此処で花火を見たよ。
 もしかしたら、そのとき、会ってたかもしれないな」

 そのまま夜景を見ていると、遥人が手をつないでくる。

 幸せだな、と思っていた。

 キスなんかしなくても、手をつないでいるだけで、幸せだ。

 でも、何故だろう。
 遥人と居ると、いつも、その幸せの先には、真っ暗な未来しか見えてこない。

 それは、梨花のせいかもしれないし、なんだかわからない遥人の決意のせいかもしれない。

 でも、だからこそ、この一瞬、一瞬の幸せに浸っていたいと思う。

 遥人の手が両肩に触れた。

 間近に見つめ、口づけてくる。

 ああ、ほんとだ、と感じた。

 自分にキスしたことがあると言った遥人の言葉。

 思い出せないけれど、遥人の唇の感触を自分は知っている気がした。