アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 


 那智は遥人の部屋の前に立ち、チャイムを鳴らした。

『勝手に入れ』
と返事がある。

 はいはい、と鍵を出して開けた。

 遥人はリビングに居た。

 普段、一人では見もしないお笑い番組を見ている。

 いや、つけているだけで、見てはいないのかもしれないが。

「ただいま帰りました。
 ご飯、食べました?」
と言うと、振り返らずに、食べた、と言う。

『拘束する旦那の典型だ』
という亮太の言葉を思い出す。

 まあ、確かにな。

 行くな、と言われるより、こうして、元気のない姿を見せられる方がこたえるな。

 なにか行ってはいけないような気分にさせられる、と苦笑いしながら、その場に腰を下ろした。

「専務、お土産です」
と駅で買った可愛いクッキーをテーブルに置くと、

「……子供か」
と言われる。

 まあ、これで機嫌を取ろうと思ったわけではないのだが。

 なんとなく、なにかお土産でも持って帰らないと悪い気がしたからだ。

「専務、なにか話でもあったんじゃないですか?」
と那智は訊く。