アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




 なんで押し切らなかったんだろうな。

 今みたいなやり方で、付き合うところまで持ち込んだことのある亮太は、頬杖をついて考えていた。

 なんで今、那智のために誤魔化してやったんだろう。

 ちょっと自分がわからない。

 もうみんなは違う話題で盛り上がっていて、那智もそれに混ざっていた。

 なんだかんだ言ってるわりには楽しそうだ。

 まあ、こいつ、いつでも何処でも楽しそうだからな、とその顔を眺めていた。

 だが、那智は笑いながらも、ちらちらと時計を確認している。

 その表情を見ていた亮太は立ち上がった。

「行こう、那智」

「え?」
 いきなり手を握られた那智が見上げる。

「帰ろう」

 外に連れ出し、扉を閉めたあとで、中からの騒ぎが聞こえてきた。

「なにあれっ」

「どうなのっ?
 結局、ほんとだったの?」

「那智、なんで素直について行ってんのよっ」

 お前らうるせえよ。
 店の迷惑だろうが、と半分振り返りながら、苦笑いする。

「亮太」
と戸惑うように自分を見上げてくる那智の手を離した。