結局、同期の呑み会に顔を出したが、気が落ち着かなくて楽しめなかった。
あまり好きでない薄い酎ハイを呑みながら、何度も店の時計を確認する。
「常務はいい人だなあ」
ちゃっかり隣に座っている亮太も、今日はあまり呑んでおらず、箸袋でなにかを折りながら、そう呟く。
「朝、俺たちが付き合ってるって言ったのに、律儀に誰にも言わなかったんだな」
何処でも噂になってねえ、と愚痴る。
「常務はそんな品のないことなさらないわよ」
と言うと、
「じゃあ、桃子たちは品がないのか。
今、此処で言って、内緒だぞ、と言っても、明日には社内の全員が知ってると思うぞ」
と折りかけの箸袋で、盛り上がっている桃子を指し、言ってくる。
まあ、女子は噂好きだからな、と思った。
内緒ですよ、とそれぞれが言いながら、噂を伝播させていく。
「俺なんか、受付の女の子と一回テニスに行っただけで、付き合って別れたことにされたぞ」
「それ、女の子も否定しなかったからじゃないの?」
なんだかんだでモテるからな、と思いながら言うと、亮太は、ほら、と手のひらに折った小さな犬らしきものを載せ、見せてくる。
「えっ。
意外に器用ね」
と言うと、テーブルに置き、那智の箸をその上に載せてくれた。
箸置きらしい。



