アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「今日は……」
と言ったとき、すぐ真横で声がした。

「無理です。
 那智は今日、同期の呑み会です」

 亮太っ!

 反対側から携帯に耳をひっつけ聞いた亮太がそう言ったのだ。

「なに勝手に言ってんのよ」
と携帯を軽く手を押さえて言うと、

「来ねえのかよ。
 桃子たちに、久しぶりの同期の呑みを断るとは何事だって、激しく追求されるぜ」
と言ってくる。

 まあ、それはそうかもしれない、と思っていると、携帯から、遥人が呼ぶ声が聞こえてきた。

 慌てて耳に当てると、遥人は、
『行ってこい』
と言う。

 それはありがたいが、ちょっと気になる。

 遥人の声がいつもと少し違う気がしたからだ。

「あ、じゃあ、一次会にちょっと顔出して帰ります」

 わかった、と聞こえた。

 誰か来たのか、すぐに電話は切れてしまう。

 溜息をついたとき、両の腰に手をやり立つ亮太が、
「甘やかしだな」
と言った。

「拘束する旦那の典型だ」

「専務は行けって言ってくれたわよ」
と反論したが、亮太は冷ややかにこちを見、

「それでも、お前が来るって言うと知ってるからだろ?
 お前、いいように使われてんな」
と言ってくるので、思い切り足を踏んでやった。