アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 こちらを見下ろしていた遥人が笑う。

 うう。
 なんかむかつくくらい綺麗な顔だ。

 なんで、梨花さんは浮気なんてしたんだろうな、と思った。

 専務は、特に申し分ない夫になりそうな気がするんだが。

 ああまあ、仕事ばかりで、遊びに連れていってくれたりはしなさそうだけど。

「一人がなに考えてるんだ?」

「え?
 梨花さんは何故、浮気をしたのかについてですよ」

 いきなり訊かれたので、つい、弾みで、ぺらっとしゃべってしまうと、お前な……と横目に見られる。

「本当に口が固いのか?」

「いや、貴方は既にその話を知っているので、話してもいいじゃないですか。
 私的には、まずかったかな、と思ってますが。

 激しく睨まれているので」

「少しは空気が読めるんだな」

「私の口の固さをお疑いですか?」

「疑うもなにも、最初から信じてはいないが。
 じゃあ、そのお前の考察したあの女が浮気した理由を教えてみろ」

 すぐに答えないと叱られそうだったので、また思ったままを言ってしまう。

「専務と居るのがつまんなかったとか?

 ああっ。
 すみません」

「……このシェヘラザードはすぐに惨殺だな」

「いやいやいや。
 口が滑っただけですよっ」
と付け加えると、余計悪いだろう、と言われた。