アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「私、和泉さん、好きなんですよね。
 誰の悪口も言わないし、どんな仕事を任せても、それなりにこなすし、それも機嫌よく」

 まあ、確かにいつも機嫌がいいな、と思い、笑ってしまう。

 公子はまた溜息をついた。

「和泉さんのことを考えているときは、いい顔してるんですけどね、専務」
と言うと、こちらがなにか言う前に、さっさと行ってしまった。

 いい顔してる、か。

 そうなのかもしれないが、そんな道を進めるような自分ではないと知っている。

 そう思ったとき、内線電話が鳴った。

「はい」
と出たあとで、しばらく黙っていた。