アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




 遥人は仕事をしながら、珍しくよそ事を考えていた。

 あのカピバラめ、カピバラのくせに、浮気をするとはどういうことだ。

 だが……、とペンを置く。

 いつまでも今のままで居られるわけもない。

 自分が梨花と結婚すれば、那智もまた、誰かと結婚してしまうだろう。

 俺の菩提を弔うとか抜かしていたが、俺や坂上亮太に対するあの流されっぷりでは、よくわからない。

 ぼんやりしている間に、誰かに婚姻届に勝手に判を押されてそうだ。

 あの桜田も気になる。

 母親の恋人なら、那智にとっては、父親のポジションのはずだが、年が近すぎるし。

 母親と一緒に現れるのを見たことがない。

 もしかして、母親の方とはもう別れているのでは。

 遥人はペンを投げた。

 仕事に身が入らない。

 あんなカピバラ、相手にするんじゃなかった。

 そう思いながら、後ろを向き、窓の外を見る。

 梨花に出会って、ようやく一気に事が成し遂げられると思ったのに、まさか、こんなことになるとは。

 だが、今も心が安らぐのは、ただ、那智と居る時間を思い出したときだけだ。