遥人と別れ、那智は公子と一緒に階段を下りていた。
那智と同じで、公子も下の受付に用があるらしかった。
「健康のために、ときどき階段を歩いてるのよ。
暴飲暴食がたたって、ちょっと血糖値が高くなってきたから」
大丈夫よ、とこちらを振り仰ぎ、公子は言った。
「話さないわよ、誰にも。
私、梨花さんが嫌いなの。
社長の娘だか会長の孫だか知らないけど、会社に来ては、男漁り。
みんなうんざりしてるわ。
あっさり引っかかった専務のこともどうかなって思ってたんだけど。
ちゃんと女を見る目はあったのね」
とこちらを見て笑う。
「梨花さんと別れればいいのに」
「いえ……。
それは無理だと思います」
と表情を暗くすると、公子は溜息をつき、
「まあ、今更難しいわよね。
今の立場がなくなるだけじゃなくて、会社に居られるかどうかも危うくなるもの」
と言ってくる。
恐らく、そうなるだろう。
だが、遥人にとって大事なのは、そこのところではない。
彼は梨花を利用して、なにかを成し遂げようとしている。
そのために生きてきた、と彼は言っていた。
きっと、その考えを曲げることはない。



