アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 そう言うと、遥人は笑った。
 少し嬉しそうに。

「笑うとこじゃないですよーっ」

「わかったわかった」
と遥人が軽く腕を叩いてくる。

「じゃあ、帰ったら、一度だけ」

「……なんで帰ったらなんですか」
と恨みがましく見上げて言うと、

「だってお前……、此処、職場だろうが」
と言うので、

「梨花さんとは職場でもするでしょ?」
と言ってやると、遥人はつまる。

 ……やっぱりか、と思った。

「あれはあっちからしてくるんだ」

 やっぱり殺すっ。

「今夜は行きませんっ」
「待て、那智っ」

 そこで堪えきれずに、吹き出す音がした。

 見ると、階段下の踊り場より更に下に公子が居た。

「す、すみません。
 聞くつもりはなかったんですが」
と言いながら、まだ笑っている。

「あんまり可愛いやり取りだったので」
と言われ、遥人と二人、赤くなる。