いや、駄目だ、と言う遥人に、
「そもそも、浮気に付き合えと言ってきたのは、専務ですよね」
と言ってやると、
「それは、俺がお前を好きじゃなくて、お前も俺を好きじゃないときの話だ」
と言ってくる。
「あれ? 専務、私のこと、好きなんですか?」
疑問に思い、情緒もなく、ストレートにそう訊いてしまうと、遥人は、一瞬の間のあと、
「だいっきらいだ」
と言ってきた。
いや、貴方、子供ですか。
「じゃあ、私も専務のことなんて、嫌いです」
そう言うと、遥人は困ったような顔をする。
「ず、ずるいですよ」
と言うと、なにが? と問われた。
「そんな顔されたら、言った私が悪いみたいな気がしてくるじゃないですか。
最初に私のこと、嫌いって言ったのは専務なのに」
「そう唱えてたら、大丈夫な気がするんだ」
なにがですか、と思っていると、遥人の腕がもう一度、自分を抱きしめてきた。
耳許で囁いてくる。
「嫌いだ。
……お前なんか、大嫌いだ、那智」
そう呟く遥人の言葉が、まったく逆のことを言っている気がしてきて、なにも言えなくなる。
「そもそも、浮気に付き合えと言ってきたのは、専務ですよね」
と言ってやると、
「それは、俺がお前を好きじゃなくて、お前も俺を好きじゃないときの話だ」
と言ってくる。
「あれ? 専務、私のこと、好きなんですか?」
疑問に思い、情緒もなく、ストレートにそう訊いてしまうと、遥人は、一瞬の間のあと、
「だいっきらいだ」
と言ってきた。
いや、貴方、子供ですか。
「じゃあ、私も専務のことなんて、嫌いです」
そう言うと、遥人は困ったような顔をする。
「ず、ずるいですよ」
と言うと、なにが? と問われた。
「そんな顔されたら、言った私が悪いみたいな気がしてくるじゃないですか。
最初に私のこと、嫌いって言ったのは専務なのに」
「そう唱えてたら、大丈夫な気がするんだ」
なにがですか、と思っていると、遥人の腕がもう一度、自分を抱きしめてきた。
耳許で囁いてくる。
「嫌いだ。
……お前なんか、大嫌いだ、那智」
そう呟く遥人の言葉が、まったく逆のことを言っている気がしてきて、なにも言えなくなる。



