アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 



 ようやくドアを開けてくれたので、ああ、冷えた、と中に駆け込むと、遥人が言う。

「早朝から迷惑だろう。
 あんなにドンドン叩いたら」

「いやあの……誰のせいなんですかね?」
と恨みがましく見上げていると、腕を組み立つ遥人が言ってきた。

「この間の男って、誰だ?」

 やっぱり、そのせいか、と思いながら、
「亮太ですよ」
と答える。

「専務も来たじゃないですか。
 この間、ドーナツ屋に亮太と居たときの話です。

 あのとき、洋人も通りかかったんですよ」

 もう洋人の居ないドアの方を見ながら、遥人が訊いてくる。

「あの小僧は何者だ。
 何故、早朝から訪ねてくる」

「ああ、あれは……。
 あれは近所の子です」

「なんだ、その間は」

「専務がお気に留められるほどの代物じゃありません。
 それより、パジャマで出てたんで、冷えたんですけどーっ」
と文句を言ってみたが、

「知らん。
 勝手にぬくもれ」
と言って、ベッドに戻っていってしまう。