アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「だんだんお母さんに似てきたわ」

 そう呟いたあとでノブを回そうとしたが、回らない。

 ……オートロックだった。

 しかも、パジャマだ。

 チャイムを鳴らすが、遥人は何故か開けてくれない。

「専務~っ。
 開けてくださいーっ」
とドアを叩いていると、離れた場所から振り向いた洋人が、

「そんな騒いだら近所迷惑だよー」
と笑いながら言ってきた。

 助けてくれるわけでもなく、首に引っかけていたヘッドフォンをかけ直すと、鼻歌を歌いながら行ってしまう。

 次来たら殺すっ、と思いながら、
「専務~、開けてください~。
 誰か来ちゃいます~っ」
と祈るように叫んだ。

 ああ、アラビアンナイトじゃなくて、天岩戸みたいになってきた。

 此処で全裸では踊れませんよ、遥人様〜っ、と心の中で叫びながら、ドアを叩き続けた。