アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




 結局、遥人の家まで有無を言わさず、連れてこられた那智だが、遥人が部屋の明かりをつけたとき、思わず、
「うわ」
と叫んでしまっていた。

「どうした?」
「いえ、イメージ通り過ぎて」

 置いてあるものかいいものしかない。
 あんまり物がない。

 モデルハウスか、此処は、と思った。

「専務、ちゃんと生きて生活してますか?」

「生活感がないか。
 あまり家に居ないからな」
と言う。

 寝に帰るだけだ、と言う遥人に渋い顔をしていると、溜息をついて、
「なんだ?」
と訊いてきた。

「いや、みんなにそう言われますか? やっぱり」
と言うと、

「みんなも何も、この部屋に入ったのは、お前くらいだ。
 ああ、たまに大学のときの友達が来るか」
と言うので、

「お嬢さんとかは?」
と、つい、言ってしまう。

 わー。
 まずい話題だった。

 梨花の浮気現場を見たのが、そもそも此処に連れてこられた原因だったのに。

「お前、よく人事に居るな。
 そんな調子で」
と言ってくるので、

「いや、私、こう見えても、口は固いんですよ」
と言ってみたのだが、遥人は胡散臭そうに横目で見ているだけだった。