アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「え」

「ママと喧嘩したんだよ。
 ちょっと女の子とカラオケに行っただけなのにー」

「そんな自業自得知らないわよ」

「っていうか、那智、その男、誰?」
と後ろに居た遥人を見上げて言う。

「あ、えーと……」
と詰まってると、

「この間の男と違うじゃない」
と余計なことを言ってくる。

「いいから、とりあえず、学校行きなさいよ」

 そう言い、背を押して、一緒に外に出る。

 ドアが閉まった瞬間、言った。

「なにしに来たの、洋人」

「え? 那智に泣きつきにだよ」
と笑顔で洋人は言う。

「嘘つきなさいよ」
と洋人の耳をさっき専務にされたみたいに引っ張る。

 いてて、と洋人は耳を押さえた。

「専務を見に来たんでしょう?」

 洋人は赤くなった耳を押さえたまま笑って言う。

「さすがだね。
 そうだよ。

 今日も泊まってるかも確認にね」

 にやっと笑ったあとで、じゃあ、また、と洋人は手を挙げて行ってしまう。