アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「また、遅刻して、あの、なんとかとか言う男に助けてもらわないといけなくなるぞ」

 なんとかって……。
 覚えてるくせに、と思いながら、片目を開ける。

 遥人の顔が目の前にあったが、外が明るいせいか、今は比較的平静な気持ちでいられた。

 間近にその顔を見つめて笑う。

「私、こうやって、片目ずつ寝られるんですよ」
ともう片方の目を開けないまま言うと、また、阿呆なことを言いだした、という顔で遥人が見る。

「すっごく疲れてるとき、片目ずつ、こうして寝ると楽になるんです」

「それ、目を休めてるだけだろう」

 そう遥人はもっともなことを言ってきた。

 が、いやいやいや、と那智は否定する。

「脳も半分休んでる感じがするんです。
 専務もやってみてください」

 やるか、と耳を引っ張られた。

「いてて……」
と言ったあとで言う。

「専務、この部屋を囚人の部屋みたいだって言ってましたけど。

 私もなんとなくそう思ってたんです。

 今も必要最小限のものしかないのは一緒だけど。

 此処に人が居るだけで、全然違う場所に見えるんですよね。

 専務が居ないときもですよ」
と付け加える。