アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 上から見下ろすのと随分違うな、と思っていた。

 膝の上の遥人を見ているときは、ちょっと母親っぽい気持ちもあったのだが。

 こうして、真横にあると、対等な感じがして、やっぱり、男の人としてしか見られない。

 しばらく微笑んで那智の顔を見ていた遥人は言った。

「やっぱりなにか話すか?」
と。

「なんでですか?」

「……間が持てないからだ」
と言う遥人は、珍しく本当に困っているように見えて、笑ってしまった。

「シェヘラザードなんですけど」
と自分でその話を振ると、遥人は、うん? という顔をする。

「あれって単に子供が可愛かったって、話なんじゃないですかね?

 毎夜、王に語って、殺されるのを先延ばしにしている間に、シェヘラザードに子供が産まれて。

 王はすっかり親バカになって改心する、みたいな話に聞こえるんですけど」

「まあ、そう取れなくもないが」

「王は本当にシェフェラザードを愛していたんですかね?」

「そんな毎夜自分に語って聞かせて、子供まで産んでくれた女が可愛くないことはないだろう」

「……じゃあ、梨花さんが専務の子供を産んだら、専務は梨花さんを好きになるんですか?」

 思わず、そう訊いてしまい、すみません、と言う。

 その設定だと、遥人が今は梨花を好きではないということになってしまうからだ。