アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「本気で言ってますよ。
 でも、それは専務の立場が悪くなるだろうな、という推測に対してそう思うだけです」

 もちろん、気持ちの上では、遥人に梨花のところに行って欲しいわけはない。

 口には出さなかったが、表情には出ていたようだ。

 ようやく笑った遥人が頬に触れてくる。

「どうした。
 元気がないな、カピバラ」

「だからー、私はカピバラなんですか。
 シェヘラザードなんですか。

 カピバラだったら、なにも語らなくてもいいですよね」
と言ってやると、

「じゃあもう、なにも話さなくていい」
と遥人は言った。

「膝枕もしなくていいぞ」
「え」

「一緒に此処で寝てくれ。
 なにもしないから」

「……それだと、カピバラでもないですよね」

「じゃあ、カピバラらしく、湯にでも浸かってろ。
 眺めてるから」
と言ってくる。

 嫌ですよ、と赤くなった那智の膝から、遥人は頭を外すと、那智の手を引っ張る。

 よろけた那智をそのまま、自分の横に寝かせた。

 真横に遥人の顔があって緊張する。