アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




 桜田と別れたあと、街を歩いていると、
「ちょっと」
と何処かで聞いたような声に呼び止められた。

 振り向くと、案の定、梨花が立っていた。

 腕を組み、仁王立ちになっている彼女の周りに、あの友人たちは居なかった。

「貴女、本当に桜田さんの妹?」

 そう訊いてくる。

 さすがにそこまで莫迦ではなかったようだ、と思いながら、
「……違います」
と言っていた。

 桜田の、あっ、こらっ、という顔が浮かんだが、とりあえず、打ち消した。

 梨花がもし、桜田に本気ななら、こんな嘘はよくないと思ったのだ。

 だが、その場合、遥人はどうなるのだ、とは思うが。

「そう。
 やっぱりね。

 なんとなく似ているから、ほんとに妹かな、と思ったんだけど。

 あのあと、話している二人の様子を見て、違うなと思ったの。

 うちにも兄が居るけど、私に対して、あんな態度を取ることはないから」

「私、昔、桜田さんが好きだったんです」

 訊かれもしないのに、そんな告白をする。

 梨花が目を見開いた。