アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 これが恋なのだろうか。

 よくわからない。

「那智」

 呼ばれて顔を上げると、桜田が那智の額を人差し指でついた。

「絶対幸せになれよ」

 そう真剣な顔で言ってくる桜田に、ちょっと泣きそうになりながらも、

「……また、なに勝手なことを言ってるんですか」
と言っていた。

 私の幸せを他人に丸投げじゃないですか、と。

 でも、ちょっとだけ笑ってしまう。

「ほら、食え。
 どんどん食え。

 今日は奢ってやるから」

 なんだろう。

 この、既に私が専務にフラれたような雰囲気は。

 好きなのかもしれないと思った瞬間に、フラれることが確定している恋というのも、なかなかしんどいな、と思いながらも、食べていた。

 味はきっと、三分の一くらいしか感じなかったけれど。