アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「勧めてるわけないだろう」
と桜田は言う。

「俺だって、お前が傷つくところは見たくない。
 でも、そのままの性格じゃ、いき遅れるかもな〜とも思ってる」

 桜田は肘をついて身を乗り出し、
「他にいい男は居ないのか」
と大真面目に訊いてくる。

「真面目でいい奴で、お前を泣かさない。
 それでいて、お前みたいな、ぼーっとした奴を、ぐいぐい押してきてくれる男は」

「み、見かけないですね、そんな人」

 私の周りに限らず、あんまり居ない気がするのだが、と思っていると、そうか、と桜田は溜息をついて言う。

「将来のために、しっかり貯蓄しろよ」
と言って食べはじめた。

「あっ。
 勝手に、私の未来を投げ捨てないでくださいよっ」

 他にもいろいろと結婚する手段はあるじゃないですか、見合いとかっ、と思ったのだが。

 じゃあ、今、見合いして誰かと結婚できるかと言うと。

 それどころか、桜田が言うような理想的な男が現れたとしても。

 きっと、ずっと頭に、遥人の寝顔がちらつくだろうなとは思っていた。

 他の人と居るようになっても、きっと毎晩願う。

 今夜、専務が眠れますように、と。