アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「やめてくださいよっ」
とその手を払ったとき、

「ちょっと!」
と鋭い声がした。

 振り向くと、梨花が立っていた。

「なんなの? この女」

 げ。

 なんで、この人、此処に、と思ったが、女ともだちを後ろに連れていた。

 友人と食事に来たところだったのだろう。

 友人たちは梨花と違い、おとなしめな感じで、少し離れたところから、困ったようにこちらを見ている。

「桜田さん、この女、誰っ?」

 いや、あんた、怒鳴り込める立場ですか、と思っている後ろから、更にロクでもないことを桜田が言ってきた。

「……妹」

 おい。

「妹さん?」

 仕方ない。
 こくりと頷いてやる。

「ああ、そうなの。
 そういえば似てる」

 そ、そうですか? と苦笑いした。

「ごめんなさい、お邪魔して」
と梨花は可愛らしく桜田に向かい、笑いかけたあとで、こちらを向き、

「でも、妹さん、何処かで見たことあるような」
と言い出す。

 会社に遊びに来てた貴女に、一度、お茶を運んだことがありますよ〜と思ったが、一社員のことなど梨花が覚えているはずもない。