アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 遥人は迷うような目をしたあとで、手を下ろした。

「もう行こうか」
と起き上がる。

「そうですね。
 そう何回もストッキングにコーヒーをこぼしたなんて言い訳、幾ら私でも無理ですもんね」
と立ち上がりながら言ったが、

「いや、大丈夫だろう」
と言われる。

 もしもし? と思いながら、支度をしに行こうとしたとき、ふいに遥人の手が自分を抱き寄せた。

 そのまま、後ろから抱き締められる。

 遥人はそのまま、じっとしていた。

 那智の頭に額をぶつけ、なにか言おうとしたようだ。

 吐息の熱を頭に感じたが、結局、遥人はなにも言わなかった。