想いを残した距離に

「渚は俺についてくればいいからさ」


意味わかんないよ…。
 

「ど、どこまで行くの?はぁ…はぁ…」
 

家を出て10分。
今、私達は山の中にいた。


「疲れちゃった…よ…」


私の体力で山を登るのは無理。
もう限界で私は足を止めた。


「大丈夫か?ほら、手貸してみ?」


幸くんはこんな時でもすごく優しい。私は幸くんの手をしっかりと握ってまた歩き始めた。


「もう少しだからな」


「うん…」


もう私はどこに行くのかなんて聞かなかった。


「着いたぞ」


「すご…い…」


私が幸くんに見せられたのはオレンジ色の夕日が掛かった街の景色だった。家のひとつひとつの屋根はオレンジ色に輝いていて向かいの山の方へは真っ黒な烏が空を飛び立っていた。


「すごいだろ?この景色…渚と見れたら最高だろうなって…思って」


私も…本当に最高だよ…。
大好きな幸くんと見れて…。


「渚はさ…ずっと一緒にいたいっていう人いないの?」


「わかんない…かな?鈍感だから…」


嘘だよ。
ずっと一緒にいたいのは幸くんだよ。
でも内緒。


「そっか。俺はいるんだ。前にも話したかな?誰にでも優しくしてさらに笑顔をくれるやつなんだけどすっげぇ可愛いんだ」


私はその時、胸を締め付けられた。

誰にでも優しくして笑顔がくれて…さらにすっごく可愛い人が幸くんの一緒にいたい人。きっと私みたいな人なんかじゃないんだろうな…。


「でもさ…こんなところ普通、その一緒にいたい人と行くんじゃ…」


「ホント、鈍感だな…」


幸くんは少し笑って私を見つめた。


「えっ?」


私はクエスチョンマークを頭の上に浮かべて少し戸惑っている。