「「「「渚!」」」」

 
この名前…本当は嫌いだった。
お父さんにつけられた名前だから…

でも好きな人に大事な人に呼ばれて気がついた。


私の名前はこれなんだって…
みんな大好きだよ。



「さようなら」



私が最後に見た景色はみんなの笑っていない顔とスローモーションになったみたいにゆっくりと落ちていくブーケ。


せめて笑顔のみんなを見て…死にたかったなぁ。



「渚…愛してる…だから行くな…よ」


幸のその声はもう私の身体には届かない。
自由になれない。声が出ない。
頭が痛い。気持ち悪い。


もう消えてしまいそう…。


「ゆ、き…」


かすれた私の声…幸はちゃんと聞こえていてくれた。


幸は私を抱きしめて最後のキスをした。



「愛を誓います…俺は渚を愛す…永遠に」


ぽつぽつの私の頬に透明な雫が落ちてくる。


私はもうその涙を拭うこともできない。
またキスを返すことも…もう名前を呼ぶこともできない。



「…ち、かいます…」


私はこの結婚式という大事な場でみんなと二度と会えなくなった。


18歳冬…私、須藤 渚はみんなの前からいなくなった。