想いを残した距離に

そういう渚もずっと左手の薬指に指輪をはめてくれてるんだけどな。


おっと…6時…か。そろそろ時間になるな。


「渚。海に行こうか」


「え!?本当ですか!?」


渚の顔が赤くなったと思ったらすぐに嬉しそうな顔になった。


「あ、でもこんな足じゃ…」


渚は脳腫瘍のせいで何か支えがないと立てない身体になってしまった。


つまり脳のせいで体がぼろぼろになってきているのだ。


「大丈夫。俺が車いすで押していくから」


「そ、う…。ありがとう」


俺は車いすを用意して渚を乗せた。そしてゆっくりと病院の外に出た。


「久々の外です…気持ちいい」


もう日は落ちてきていてオレンジ色の空が俺達を包んだ。


「ふたりで見た…オレンジの空みたい」


「え?」 


オレンジの空…ふたり…もしかして夏休みのことを言ってるのか? 


「幸さん。私…少しずつだけど記憶が戻ってきている気がします…」


「そうか」


俺は笑って返した。


「あれ?もしかして…す、とうさん?」


海に行く途中に出会ったのはクラスメイト達だった。そこには渚をいじめていた宮ノ下達も混ざっていた。


「悪いが今、渚は「こんにちは」