想いを残した距離に

俺は渚の左手の薬指にはめてある指輪を指差した。それは俺があげたものだった。


「私が倒れた時に大事に握っていたんだって…私もこれは絶対に手放しちゃいけない気がするの…」


「左手の薬指にはめるんだ。意味知ってるだろ?」


「はい。でも私、この指輪をもらった時からこうしたかったんです。記憶はないけど」


渚の中にはまだ俺がいる。
名前も知らない俺がいる。


俺は左手の薬指を渚に見せた。


「これって…」


「この指輪な…俺があげたんだ。結婚したいくらい好きだって…」 


「え?」


今まで渚と俺が付き合っている…という想い出には触れなかった。でも今日の渚を見て言わなきゃいけない。そんな気がした。


「俺は渚と付き合ってた。俺はお前を愛している」


渚の顔は真っ赤だった。でもその目を俺から離すことはなかった。


「渚はずりぃな。俺ばっかりに告白させんだもん」


「ご、ごめんなさい」


こんなことを言いたいわけじゃないけど悔しくて苦しくてついつい言葉に出てしまう。


「でも俺は…渚が俺を忘れても俺はお前の事好きだから…それだけは覚えておいてよ」


「はい…」