渚が俺に話してくれた時から何度嘘かと思った。だってあんなに笑顔で俺の名前を…愛しく呼んでくれる。そんな渚が死ぬなんて考えられない。


「持ったとしてもあと…1ヶ月」


1年…まだ少しだけあった時間はどうしてこんなに短くなったんだろう。


「そう。でも渚は頑張ったわ。私達が今、悲しんではいけないの」


渚のお母さんも今に泣きたそうな顔をしている。海くんなんてもう泣いているんだ。
海くんだけじゃない。獅子村も佐久間もあの上戸や月影でさえ、涙目なんだ。


「渚…生きろ…」


俺は誰にも聞こえないような声でそう言った。


生きてもう一度だけ顔を見せて。そして呼んで?俺の名前を…。


「幸くん。結ちゃん。みんな。今日はもう帰りなさい。疲れてるでしょう?」


「そんな!渚がこんな状態なのに…渚…渚ぁ」


獅子村はどれだけ辛いだろうか。
ずっと前から渚と仲良くてこれからも…って思ってたはずなのに消えてしまうなんて
きっと俺じゃあ泣くだけじゃ済まない。


「きっとまだ渚は目を覚まさないわ。あなた達も雪まみれで濡れてるでしょ?いつ来てもいいからとりあえず今日は帰りなさい…」


渚のお母さんも今に泣きそうだ。
当たり前だよな。親だもんな。家族だもんな。


「言うとおりにして今日は帰りましょう。親も心配するでしょう。またすぐ合流しましょう」


月影の提案に誰も反対する人はいなかった。俺達は帰りたくはないけれども仕方なく帰ることにした。