想いを残した距離に

「…幸に言ったのも最近なの。だから結に言わなかったわけ…」


結はもしかしたら怒っているのかもしれない。最後の最後まで喧嘩しちゃうのかもしれない。


「…もう馬鹿だなぁ…。怒ってると思った?」


結はニコッとはにかんでみせた。


「ごめんね。渚だって嫌だよね。本当にごめんね」


結は私に背中を見せた。それを見た大河は結をそっと抱き寄せた。きっと泣いているんだろう。


「脳腫瘍…死んでしまうということは…悪性ってことなんですね…」


「うん。手術しても取り除けないところにできちゃったらしくてね……」


いつの間にか雪がたくさん降ってきていた。今いる場所から見る街の景色はとても幻想的で銀世界だった。


「渚…余命は…?」


「1年…持つかどうかなんだって…」


私がそう言うと望はそっと私に抱きついた。そして私と幸の手は自然と離れた。


「辛いだろ…辛かっただろ?私らに言えなかったのは私らが幸せそうだったからだ ろ?」


望はぽんぽんと私の背中を手の平で叩いた。


「の、ぞみ…」


駄目…自然と涙が出てきてしまう…。
弱くてごめんなさい。ごめんなさい…。


「うわぁああああ…言わなくてごめん。ごめんね。望…結…!みんな、ごめん。本当にごめんなさい…ごめんなさい…」


ただこの場所で…私達は涙を流した。
雪よりも早く早く…涙を流した。