想いを残した距離に

「怒り方なんてわかんないよ…怒り方によっては人を傷つけるんだよ?」


「喧嘩って傷つけることばっかだと思うよ。みんなそうだよ。嫌われたくなくて怒りたくなるようなことでも我慢する。だからねーちゃんは優しいんだよ」


「何が言いたいの…?」 


「ねーちゃんには言ってなかったけどさ…」


突然、深刻そうな声を出す海。


「なに?」


「俺の小学校のころの親友がさ死んだんだ…」


「え…?」


「飲酒運転の車に突っ込まれてパーだよ。ねーちゃんには心配してほしくないっていうか…なんか言えなくて…でもさ、
元気だった親友が突然消えたんだ」


今にも泣き出しそうな声。
声も震えている。


「飲酒運転の奴は逮捕されたけどさ…もう二度と親友は戻ってこないんだ。だからさ、ねーちゃんだけが死ぬってわけじゃないんだよ。俺も昨日考えたんだ。ねーちゃんの気持ちもわからなくはないけど俺だって今日、明日死ぬかもしれない恐怖はある。当たり前だと思っていた日常が消えたこともある。だから…ねーちゃんは生きる希望を失っちゃいけないんだよ」


『当たり前に帰ってくると思っていた母さんが二度と帰ってこない』


海の当たり前という言葉に私は幸くんのお母さんのことを重ねた。


「生きる希望…」


「ねーちゃん今すっごく楽しいんでしょ?だったら死ぬってことも忘れるくらい幸せになりなよ!俺だって手伝う!だからもう泣かないで…俺のたった一人のねーちゃんなんだから…」