想いを残した距離に

「ねーちゃんは優しいよな…」


「…私が優しい?」


私は扉の近くまで行ってその場に座った。
今、私と海の間に挟まるのは5センチくらいの扉のみ。


「俺…ねーちゃんが俺に向かって怒ったこと一度もねーもん。俺は何度もある」


「そうだっけ?」


「俺がねーちゃんのキーホルダー壊した時も大丈夫って言って許してくれたし…俺がねーちゃんが風邪の時に友達を家に連れてきた時も追い返そうとせず迎えてくれたじゃん」


「その、キーホルダーは大事じゃなかったし…家の時は海の友達がいたからだよ…」 


「俺知ってんだ…キーホルダーは中学卒業祝っていってお母さんから貰ったやつだったことも…友達が帰ったあとにねーちゃんの容体が悪くなったことも…」


なんでこんなにどうでもいいことを覚えてるんだろ…。私はただ、怒る理由なんてないから怒らなかっただけなのに…。


「俺は何度も何度もねーちゃん関係ねぇのに当たったりしてさ…」


「私そんなに怒られたことないよ」


「なんかさ…ねーちゃんの本当に怒ったところが見てみたいって思ったことがたまにあるんだよな」


「なんで…?」


「なんか、本当のねーちゃん知れるみたいで嬉しいからかなぁ?」


海は優しいし強いなぁ…。
私のためなんかにこんなどうでもいい話題を振ったりしてさ…。もし立場が逆転してたらきっと私はこんなことできなかった。