その刀を手に取り、鞘を払う。


ドクンッ

刀が心臓のように波打つ。

同時に、その刀が紅く、妖しく輝いた。


それは、まるで桜の花ように華やかで、鮮血のように不気味な輝き。

『妖刀』といわれるだけあって、貪欲に人の血を求めているようだ。


その刀を持っている右手が、異常に冷たくなって、心臓へと侵食されていく感覚。

だが、その冷たさが心臓へと届いたと思うと、
心地よい暖かさへと変わった。


まるで、刀と一心同体になったかのようだ。

「私は、この刀がいいな。」

この刀を持つと、酷く落ち着く。
私は自然と浮かんでいた笑みを、店主へと向けた。

店主「あ、あぁ。」

店主は、眉間にしわを寄せてその刀を凝視している。

「この刀の名前は?」

店主「・・・やっぱり、わからん。」

「どういうこと?」