俺たちが居なくなった部屋では、加菜恵さんと翡翠がぽつんと残されていた。
加菜恵さんは翡翠を抱いたまま畳に倒れ込み、深く息を吐いた。
「……嘘だと思いたいのよ、私は。何かの間違いだって」
明月が襲って来るのは本当のことだ。
でも、それよりも大きな事実を知ってしまった。
「色々とタイミングも良すぎる……でも、私は悔いてないわ。この先、どんなに状況が悪くなろうと。ね、ひーちゃん?」
そう呟きながら、黒くて柔らかい身体を撫でた。
そして複雑な光をその瞳に宿しながらも、彼女は疲れたようにその目を閉じた。
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