すると、上の穴からトレインが顔を出して言った。
「懐かしいな。」
僕は上りながら叫ぶ。
「どういう意味だよ!!!助けてくれ!!!!」
「俺がお前でお前が俺で」
トレインは糸に触れる。
「過去の俺が、時空の歪みで過去から来たんだろうな。だがこのままじゃドッペルゲンガーと同じでどちらかが消えるんだ。お前に来てもらっちゃあ困る。」
僕はまさかと思いながらも糸を手繰り寄せる。が、下にいる群集のおかげで、糸が切れそうになっていく。
「僕は出るんだ!!これからも生きて行かなきゃいけない!!師匠のことだってまだわかってない!!!」
僕は群集に訴えるが、群集は糸に絡み付く。
「この糸は僕の糸なんだよ!!!!!」
僕は思わずぎょっとする。慌てて上のトレインを見ると
「その言葉を待っていたよ。」
といって糸切り鋏で糸をチョキンと切った。

その瞬間僕の体は重力に任せたように落ちていった。群集のなかに落ちていった。

どこかへ向かう師匠の姿とともに記憶の中に落ちていった。