風吹き抜ける昼ごろ。再び木が生い茂る森を歩いていた頃だった。
急に大風が吹き上がり、僕の制帽とコートが舞い上がる。
「また何か考え事ですかい。テン。」
一匹の鹿頭の人型が現れた。毛は、光りに当たるごとに薄桃の光りが輝く。
「まあ考えていないってことはないでしょうなぁ。」
鹿頭は一人でぶつぶつと呟いては自分で反論したりなにかしている。
「あの鹿頭はなんだろう。」
僕が呟くと、師匠は
「『さとり』です。」