「血が足りなくて弱ってるおん。ただの貧血だおん。大丈夫だおん。血をとめてちょっと縫えばなんともないおん。」
テン頭の医者はヒゲを揺らして答える。
「縫う?!」
イノタニは驚くが、医者によるとこういうことはよくあるらしい。狩りの最中に鷹につつかれてたいへんだったテンがいるそうだ。
「そんな思い詰めなくてもいいおん。大丈夫だおん。」
医者は僕を見つめる。黒目がちな目が可愛いのか気持ちが悪いのかわからないほどだ。
「まあ、すこしは反省したみたいだおん。許してやってくれだおん。」
それを聞いてイノタニは息をついた。