僕はそっと振り返る。が、貴方の姿は何処にもなかった。それもそうで、僕と貴方は赤の他人だ。そう、赤の他人。
「そりゃそうだよな。恥ずかしくて死んじまうよなぁ~。」
驚いて後ろを振り返る。ちょっと期待も入れながら。

角が一本でこに生え、けむくじゃらの鬼が頷きながら立っていた。
「あまのじゃくか。どこかへ行ってくれよ。いまはそういう気分じゃないんだ。」
あまのじゃくというのは、妖怪の鬼に部類するものらしく、やぃこのあまのじゃくというのはこいつから生まれたらしい。
実はこの和正になってから、妖怪やら化け物が人の世界に姿を現すようになった。いまや日常茶飯事である。
妖怪といっても、人間のように感情があって、人と生活している。なぜ妖怪が姿を現したのかは不明だが、皆の記憶のなかに妖怪というものが昔からいたかのように生活に妖怪がなじみ、人間と共存している。もちろん悪い妖怪はいるが、悪い人間もいる。まあ、そちらも別の意味で共存している。
僕はこの時代がすきだ。

まあ、そんなこんなであまのじゃくがふっと現れた訳だが
「いま誰かの心を詠んでほしいとかおもわなかったか?そうだとおもって現れてやったというのに、薄情なやつだなぁ。」
「た、たしかに思ったけど...。あまのじゃくにはわからないよ。」
「この俺様に解らないことがあるものか。あのあまのじゃく様だぞ。」
あまのじゃくは鼻息をあらくして言った。
「そうだあまのじゃく。よかったら今夜泊まる家を探してほしいな~。あまのじゃく様ならこんなこと楽勝に決まってるよね。」
僕はおだてると、
「こいつめ。」
といいながらどこかへ消えていった。