式場のスタッフに声をかけられて、挙式会場まで案内される。


例のごとくカメ男は人よりも歩くのが遅いので、必然的にぞろぞろ続く参列者の最後尾になった。
急かしても急かしても、ヤツは急ぐ様子も無くて。
仕事中、忙しい時にはそれなりに素早く動くこともあるんだろうけど、私はそれをまだ目撃したことは無い。


一体、どんな状況ならヤツは走ったり急いだりするんだか。


私とカメ男が最後尾で会場に入る。


大きなシャンデリアが天井についていて、床はガラス張りになっているその挙式会場は、白を基調とした厳かな雰囲気の場所だった。
何回出席しても結婚式って素敵で、いつも幸せな気持ちをもらえるから、たとえご祝儀貧乏になろうと招待してもらえるのは嬉しい。


チラッと隣に座るカメ男の横顔を見てみたものの、いまいちヤツと結婚式を挙げる自分の姿が想像つかなかった。


なんだかなぁ~。
やっぱり私たちにはまだまだ結婚っていう言葉は遠いな。


そんなことを考えていたら、逆隣から張りのある声が聞こえた。


「大野さんっ!!」


あまりに突然声をかけられたもんだから、ビックリして飛び跳ねてしまった。


振り向くとハァハァと肩で息を切らした久住が、ド派手な真っ黄色のラメ入りワンピースを着て、頭の上にでっかいお団子を作ったようなヘアアレンジでドカッと座っていた。
もちろん、私のことをガン見している。


「久住……」

「大野さんっ!偶然ね!あなたも呼ばれてるなんて!」


相変わらず声が大きい。
私だって笑うと相当声が大きいらしいんだけど、彼女には勝てる気がしない。


「事務課は全員呼ばれてるんだ」


と、念のため教えてあげた。