すると、駆け足で私たちのところへ優くんが走り寄ってきた。


「場所分かんなくて探しながら来ちゃったよ~!遅刻するかと思って焦った~」


そう言いながら汗ばむ額をハンカチで拭う優くんは、相変わらずのイケメンぶりを遺憾なく発揮していて。
おそらく小巻ちゃんの学生時代のお友達と思われる女の子たちが、彼を見てきゃあきゃあ騒いでいた。


「優くんってさ、しゃべらなければもっとモテそうだよね」


ふと思ったことをつい口にしたら、優くんがそれはそれは悲しげに肩を落として落ち込んだ表情を見せる。


「それ1番キツいセリフだ……」

「ご、ごめん……」


彼は夏頃から好きだった介護士の女の子に振られたばかりなのだ。
私ったら余計なことを。


「で、でもほら!ここでまた新たな出会いがあるかもよ?あそこらへんの子たち、優くんのこと見て騒いでるし!」

「どうせ俺のこのナイスな顔だけで騒いでるんだろ」


フォローしたつもりが、優くんはすっかり気を良くしてきゃあきゃあ言ってる女の子たちにニッコリ愛想なんかを振りまいちゃってる。
心配して損した。


「小巻ちゃん、今頃緊張してるでしょうねぇ」


パステルカラーの造花で囲われた手作りのウェルカムボードを携帯のカメラで撮りながら、真野さんがうっとりと微笑む。


そのウェルカムボードには、ディズニーランドのシンデレラ城前で彼と並んで笑う小巻ちゃんの写真が貼られていた。
「Shota & Komaki」という文字も一緒に。
そういえば、小巻ちゃんはよく「将太が」「将太が」って話してくれてたなぁ。


小柄な小巻ちゃんがパタパタと事務所内を走り回る姿を思い出した。