「あらららら、素敵ねぇ~!コズちゃんも、奈々ちゃんも~!」


ほほほ、と真野さんが彼女特有の上品な笑い声を上げる。
そういう真野さんもなかなか素敵なシックなワンピースに身を包んでいて、30代といってもおかしくなさそうな身なりをしていた。


今日は元同僚で後輩の小巻ちゃんの結婚式に呼ばれていて、駅から少し離れたゲストハウス型の式場に来ていた。
ロビーは招待された人たちで混雑しており、私たちは隅っこの方で立ち話をしているというわけだ。


結婚式ということもあり、会社で仕事をするスタイルとはだいぶ違ったきらびやかな服装を着て、髪の毛もきちんとセットしてここまでやって来たのだった。


真野さんは顔も若々しいけど、センスも若ぶることなく、かといって老けてもいないちょうどいいものを選んでいて、くすんだ緑の膝下のワンピースがよく似合っていた。


「真野さんの色気には負けますよ~!」


奈々も真野さんの出で立ちを見て、ほぉ~っとため息をつくほどだ。


鮮やかな真っ赤のワンピースを着ている奈々とは対照的に、私は無難なネイビーのシンプルなワンピースを選んでしまった。


ヤバいぞ。
この2人といると、私……地味じゃないか?
色味が無い!


やや気後れしそうになっていると、カメ男が会場に到着したのが見えた。


一緒にカメ男とここまで来たはいいものの、ヤツは2年前に出席した結婚式で婚礼用のネクタイを汚したのを忘れていたらしく。
さっき急きょ買いに行ったのだ。


「ネクタイ間に合ってよかったね」


私が声をかけると、ヤツはコクンとうなずいた。


そんなカメ男を舐め回すように上から下まで奈々が眺めて、呆れた口調でつぶやく。


「須和。いつもよりなんか小綺麗になってない?」

「いや。いつも通り」

「あ、寝ぐせがついてないのか!」


奈々が言いたいことはよ~く分かる。
出発前に私が散々ヤツに寝ぐせを治せと口うるさく言ったために、どうにかマトモな見た目になった。
でもヤツは本当に本当に本当に自分の見た目とか、人からどう見られているかとか、そういうことに無頓着だ。
だけどこだわりも無いから、言われた通りにはしてくれるんだけど。


出来れば今かけてる実用性を重視したあまりオシャレではないメガネも、少しくらいデサイン性を優先したものに変えてもいいと思うんだよね。
いつか絶対オシャレなメガネに変えてやるんだと密かに目論んでいるのだ。