「あ、あ、あんたねぇ、風邪引いてるのに!熱あるのに!ダメだったら!なに考えてんのよ!」


危うくその気にさせられるところだった、と妙な汗をかいていると、カメ男はしれっとした態度で


「梢のせいでしょ」


と言った。
そして、続けざまにこうつぶやいた。
「もう寝るね」って。


さっさと部屋に戻っていったヤツの姿を見送って、私はうるさく鳴り響く心臓の音をかき消すべく水道をMAXの勢いで流した。


今日は床で寝てやる!
あいつに襲われる!
風邪も移される!
そう簡単に許すものか!


……と思いつつも、数分前の出来事を密かに思い出してちょっとときめいちゃってる自分が怖い。


新潟の温泉に行きたかったな、というほんの少しの気持ちは、カメ男による先ほどのキスによって見事に帳消しにされてしまった。


こうやって私はヤツにハマっていくんだよね。
とほほ。





旅行には行けなかったけど、それなりに楽しめた夏休みになったのでした。


ちゃんちゃん。